近代・現代の神楽

明治時代〜現在

明治時代、神楽は大きな転換点を迎えます。それまで神職が担っていた舞が氏子(地域の人たち)の手に渡り、いまの「神楽団」や「社中」のかたちが生まれました。

明治の改革と、氏子への継承

  1. 1江戸時代まで神職・山伏・巫女が神楽を担う
  2. 2明治時代の初め神楽の様式の改正と、神職の演舞の禁止
  3. 3氏子が舞い手に地域の人たちが舞う(神俗交代)
  4. 4神楽団・社中の誕生石見では速い「八調子」が広まる
神楽の担い手の移り変わりです。明治時代の初めに、神職から氏子へと移りました。

明治の初め、国学者による神楽の様式の改正や、神職が神楽を舞うことを禁じる命令などをきっかけに、氏子が舞い手を務めるようになりました(神俗交代)。[1]佐太神社でも神社制度の改革によって神職の演舞が禁じられ、神能は旧神職の手で受け継がれました。[2]明治維新のあとは、神職だけでなく民間の人たちも神楽を演じるようになります。[3]

こうした流れのなかで、島根県西部の石見神楽は、それまでの六調子から、速くて躍動感のある「八調子」へと変わっていきました。[1]浜田市の資料によれば、明治以降の浜田では「改正神楽(八調子神楽)」や「校定石見神楽台本」といった石見神楽の文化が花開き、面や蛇胴、衣装のものづくりも生まれました。[4]

一方、伊勢神宮の湯立神楽は、明治維新のころに伊勢では絶えてしまいました。[3]明治7年(1874年)には、江戸で発達した神楽が「郷(里)神楽」と呼ばれるようになります。[3]

宮中の御神楽のその後

宮中の御神楽は、明治以降、宮内庁楽部の楽人だけで奉仕するようになりました。[3]明治41年(1908年)の皇室祭祀令で「小祭」のひとつと定められ、昭和22年(1947年)、敗戦にともなって祭祀令は廃止されました。[5]いまも毎年12月中旬に、簡略化した御神楽が賢所で行われています。[5]

守り手の組織づくり

佐陀神能では、大正8年(1919年)に佐太神社古伝神事保存協会が結成されました。その神能部がのちに佐太神能保存会となり、いまに至っています。[2]

戦後の新舞

広島県の芸北神楽には、戦前から伝わる「旧舞」と、戦後に生まれた「新舞」があります。新舞は、戦後に連合国軍総司令部(GHQ)が神楽を規制するなかで、神道色を薄め、娯楽性を高めてつくられたものとされています。[6]

文化財としての保護

昭和50年(1975年)の文化財保護法の改正で「重要無形民俗文化財」の指定制度ができ、翌昭和51年(1976年)5月4日に第1回として30件が指定されました。[7]佐陀神能も、この年に国の重要無形民俗文化財になっています。[8]

その後、1978年に高千穂の夜神楽[9]、1979年に備中神楽[10]と、石見神楽のルーツとされる大元神楽[1]、遠山の霜月祭[11]、1980年に土佐の神楽[12]、1981年に伊勢大神楽[13]が相次いで指定されました。国指定の神楽は、2025年の時点で40件とされています。[3]

指定年神楽地域
1976年佐陀神能島根県
1978年高千穂の夜神楽宮崎県
1979年備中神楽・大元神楽(石見神楽のルーツ)・遠山の霜月祭岡山県・島根県・長野県
1980年土佐の神楽高知県
1981年伊勢大神楽三重県

表には、本文で取り上げた主な神楽だけを載せています。国指定の神楽は、2025年の時点で40件とされています。

ユネスコ、そして世界へ

佐陀神能は、平成23年(2011年)11月27日、ユネスコの無形文化遺産に登録されました。[8]2019年には、石見神楽と15の構成文化財が日本遺産に認定されています。[1]

現代の神楽

全国に4,000を超えるといわれる神楽ですが、少子高齢化や過疎化によって、存続も継承も難しくなっています。[14]2022年10月11日には、神楽を守り盛り上げるために、全国神楽継承・振興協議会の設立総会が開かれました。[15]そして2025年11月28日、文化庁は神楽を、ユネスコ無形文化遺産への2028年の提案候補に選んでいます。[15]

神楽は、いまも各地で舞い継がれています。日付・場所で探すや種類で探すから、近くで観られる神楽を探してみてください。

出典

  1. 石見神楽(Wikipedia) ↩
  2. 第12回市史講座ミニレポート「松江の芸能」(松江市) ↩
  3. 神楽(日本大百科全書・世界大百科事典・日本国語大辞典ほか)(コトバンク) ↩
  4. 石見神楽の保存・伝承に関する提言書(案)(浜田市(石見神楽伝承内容検討専門委員会)) ↩
  5. 御神楽(Wikipedia) ↩
  6. 広島市「ひろしま市民と市政」(神楽の紹介)(広島市) ↩
  7. 重要無形民俗文化財(Wikipedia) ↩
  8. 佐陀神能(Wikipedia) ↩
  9. 高千穂の夜神楽(Wikipedia) ↩
  10. 備中神楽(Wikipedia) ↩
  11. 遠山の霜月祭(飯田市) ↩
  12. 土佐の神楽(文化庁 文化遺産オンライン) ↩
  13. 伊勢大神楽(Wikipedia) ↩
  14. 全国神楽継承・振興協議会(全国神楽継承・振興協議会) ↩
  15. 神楽(Wikipedia) ↩

確認日: 2026年10月20日。上の辞典や公的な情報をもとに要約しています。神楽の起源や年代には諸説あります。